決まり文句【by北村宣晃(師父親鸞)】
こんにちは、北村宣晃です(師父親鸞)です。
今回はビジネス文書で使える「決まり文句」についてお話ししていきたいと思います。
敬称の使い分け
敬称には「卑称(謙譲語)」と「尊称(尊敬語)」の二種類があります。
「卑称」とは、へりくだって自分のことを呼ぶときに使うものです。
一方「尊称」とは敬意をこめて先方を呼ぶ際に用いるものになります。
皆さんも日常的に何となく使っているものだと思いますが、改めてこの機会に確認していきましょう。
以下にシーンごとでの継承を列挙しますが、両者を比較するために「卑称/尊称」という書き方をしてます。
- 個人:わたし、わたくし/あなた、貴殿、先生
- 複数:一同、両名、私ども/ご一同、各位、お二方
- 会社:弊社、当社、小社/貴社、御社
- 授受:受領、拝受/ご査収、お納め
- 考え:愚見、所感/ご意見、ご高説、ご賢察
- 家族:一同、私ども、家中/皆(さま)方、ご一同様
- 両親:父母、両親/お父様お母様、ご両親様
- 住まい:小宅、拙宅、私宅/お宅、貴宅、尊宅
- 手紙:手紙、便り、書中/お手紙、ご書面、芳書
- 品物:心ばかりの品、粗品/結構なお品、心づかい
どれも知っていて何となく使っている言葉だと思いますが、これらは先方と自分との関係を明らかににする役割を持っています。
ビジネスシーンでは言葉の使い方ひとつで、相手の尊厳を傷つけてしまったり、簡単に信用を失ってしまったりします。
くれぐれも敬称の使い方には注意してください。
よく使う言い回し
先方に文書を送る際に、言葉は当然尊敬語を用いるのは当然ですね。
ですがそれ以外にも、ビジネス文書では表現に暗黙の了解があるものがたくさんあります。
知らなくても差し支えるわけではありませんが、さりげなく適切な言い回しを使えるようになれれば、受けとる側の印象もグッと良くなることでしょう。
- 「~していただく(してもらう)」 ⇒ 「賜る」
- 「~を頼みます」 ⇒ 「~のほどお願い申し上げます」
- 「それで~」 ⇒ 「つきましては~」
- 「とりあえず」 ⇒ 「取り急ぎ」
- 「御多忙で」 ⇒ 「ご多用」
- 「お陰様で」 ⇒ 「お陰様を持ちまして」
「定型のあいさつ」は三種類だけ覚えよ
社外文書の主文の前の前文は、「時候のあいさつ」+「定型のあいさつ」で出来ています。
その内、「定型のあいさつ」にも多くの言い回しがありますが、それを全部網羅するのは大変だと思いますので、とりあえず以下の三種類だけ丸暗記しておきましょう。
この三種類さえ覚えていればたいていの社外文書にはたいおうできるお思います。
- 「ますますご清栄のこととお喜び申し上げます」
- 「ますますご隆盛のこととお喜び申し上げます」
- 「ますますご清祥のこととお喜び申し上げます」
この「ご清栄」「ご清祥」「ご清祥」という単語さえ覚えてしまえばあとは同じなので、是非この機会に頭に叩き込んでおきましょう。
因みにそれぞれの単語の意味は、
- 清栄:繁栄している様を祝う様子
- 隆盛:勢いが盛んな様を祝う様子
- 清祥:元気な暮らしを祝う言葉
という感じです。
「時候のあいさつ」の種類
「時候のあいさつ」は季節に応じて変わっていきます。
この「時候のあいさつ」は、必ず「前文」で「定型のあいさつ」の直前に挿入してください。
- 1月:厳寒の候、寒風の候、寒さ厳しき折
- 2月:残寒の候、余寒なお厳しき折、梅花の候
- 3月:早春の候、春陽の候、日毎に暖かく
- 4月:陽春の候、春もたけなわになり
- 5月:新緑の候、風薫る季節、若葉すがすがしく
- 6月:初夏の候、梅雨の候、入梅の候
- 7月:盛夏の候、暑さ厳しき折、炎暑の候
- 8月:残暑の候、いまだ暑さ厳しき折
- 9月:初秋の候、重陽(ちょうよう)の候、彼岸の候
- 10月:行楽の候、日増しに秋も深まり
- 11月:晩秋の候x寒さが日増しに加わり
- 12月:年末多忙の折
「頭語▪末語」の対応
これらは手紙の中で、それぞれ文頭と文末に配置するもので、対になって初めて意味をなします。
これはビジネス文書だけでなく、日常で書く手紙にも使うものですので、ぜひ一通り覚えてしまいましょう。
- 通常:「拝啓」⇒「敬具」、「拝呈」⇒「拝見」
- 丁重:「謹啓」⇒「敬具▪謹言」、「奉啓」⇒「謹上」
- 急ぎ:「急啓」⇒「敬具▪敬白▪拝具」、「急白」⇒「敬具▪敬白▪拝具」
- 前文省略:「前略」⇒「草々(早々)」、「再呈」⇒「敬具」
- 返信:「拝復」⇒「敬具▪敬白」、「書簡拝読」⇒「敬答」
【執筆者:北村宣晃】